深淵から見えた

白衣の堕天使。精神科→外科。

2016-01-01から1年間の記事一覧

真っ白な病室の窓の向こうには

8月 待ちに待ったその日が来た。 真夏の精神病院 その日はいつも通りの時間に起きて おめかしをして 「佐々木さん、調子が良さそうですね」 なんて看護師さんから 声を掛けられるくらいには 晴れ晴れとした表情をしていた。 15時くらいに病室に聞こえるくらい…

波の随に願って

私の大好きだった祖父は癌で亡くなった。 「家族と最期の夏を」 そう望んで オピオイドで疼痛コントロールしながら 自宅で数ヶ月療養した 何の知識もない12歳の私が 祖父の背中にフェントステープを 貼っていたことを覚えている。 それから丁度10年が経った。 …

未来づくり

ガラスの割れる音 怒声 何かが壊れる音 鈍い音がした後 痛みに咽び泣く声と 襖の隙間から漏れる 蛍光灯の光 そして、 不安と恐怖で眠れない夜 いつだっただろう あれから何年経っただろう 昨日の事みたいに 瞼の裏に焼き付いている光景 耳の奥にこびり付いて…

再起

精神科を退院してから3ヶ月が経った。 あの後、私は仕事を辞めた。 「患者の急変対応ができるようになりたい」 そう思って一般病院の外科に行った。 挿管の介助もできるようになった。 また沢山の患者さんと出会った。 命を削ってまで生きたいと 再発するガン…

ジキルとハイド

「もうしんどいんです」 巡視に来た看護師の私に 彼女は言った。 丁度、精神症状が悪化して来た 彼女に 何と言葉を返して良いか分からず ただ話を聴く事しかできなかった。 たった、3ヶ月前の事だ。 8月11日 午前1時 私は精神病院の開放病棟にいた。 看護師…

メンヘラと知って逃げ出したんだ

精神科で働くメンヘラとして精神医療に対する啓発をしようと立ち上げたブログなのに完全に自分語り用の自己満足ブログに成り下がってしまいました。そこで、今日は私の恋愛について語らせて下さい。私が完全に境界性人格障害を発症したのは初めて恋人が出来…

僕が死のうと思ったのは

こうして眠れない夜は看護学校の吹き曝しの廊下に出て柵にもたれて地面を見下ろしていた日々を思い出す。地面には茶色い土、小石、それから視界の隅にアオギリの木があってその木漏れ日が揺れていた。今でもあの景色は鮮明に思い出せる。「ここから落ちたら死…